人間の最も古い友とされる、犬たち。

彼らはその長い付き合いから、伝説や神話・言い伝えなどにも良く登場しますよね。

そんな彼らを少し紹介していきたいと思います。

目次

狙った獲物は逃さない!「ライラプス」

忠犬「マイラ」

北欧神話での冥界の番犬「ガルム」

送り狼の元ネタ?妖怪「送り犬」

死者の守護者「アヌビス」

真神(まがみ)は狼の異名

まとめ

狙った獲物は逃さない!「ライラプス」

彼はギリシア神話に登場する、凄腕の猟犬です。

「いかなる獲物であろうと決して取り逃すことは無い」ことを運命づけられていた「ライラプス」は、一説ではクレタ島のミノス王の宝物だったそう。

そんな彼は、あるときテーバイという国で暴れる怪物「テウメッソスの狐」を、アムピトリュオンという青年と共に退治することになりました。

ですが、厄介なことにこの怪物狐、「誰にも捕まることは無い」という運命を背負っていたんです。

激闘の末、やっと怪物狐を追い詰めた彼ですが、天上からこれを見ていた大神ゼウスが、双方の運命を慮り、共に石に変えてしまったのだそうです。

これで、逃せば犬の運命がウソになり、捕まれば狐の運命がウソになるという事態を回避したことになりますが…なんとも、やるせないですね。

忠犬「マイラ」

こちらもギリシア神話に伝えられている犬のお話です。

酒の神ディオニュソスから葡萄を授けられ、ワインの醸造法を教わったイーカリオスという男が非常に可愛がっていた犬が「マイラ」です。

神から伝授されたワインの素晴らしさを伝えたくて、羊飼いたちのところへ行き振る舞ったところ、彼らは酩酊してしまいました。

すると、「毒を盛られた!」と勘違いし羊飼いたちは、なんとイーカリオスを殺してしまいます。

その後、父の死を知らず行方不明になったと信じていた、娘であるエーリゴネーは必死に父を探し求めたのですが、どうしても見つけられませんでした。

そんな中、マイラが「ここだよ」と必死に主人であったイーカリオスが葬られた場所を彼女に教えました。

ですが、それに気付いた彼女は大切な父の死にひどく悲しみ、自らの命を絶ってしまうのです。

その様子をみてひどく同情した神々によって、父はうしかい座に娘はおとめ座、そしてマイラはシリウス(おおいぬ座の最も明るい恒星)へと姿を変えたのだそうです。

※おとめ座の伝説については諸説ありますが、ここではマイラに関する言い伝えに沿って書かせていただきました。

北欧神話での冥界の番犬「ガルム」

冥界の番犬といえば、ギリシア神話に登場する三つの頭を持つケルベロスが有名ですが、ここでは北欧神話で活躍した番犬の話を紹介しましょう。

死者の国ヘルヘイムにある、冥界の女神ヘルが住むエーリューズニルという館の番犬が「ガルム」です。

むやみに冥界へ踏み込もうとする者たちを追い払い、冥界から逃げ出そうとする死者がいないか見張るのが彼の仕事でした。

「グリームニルの言葉」という北欧の古い詩篇で「最高の犬である」と賞賛される彼ですが、北欧神話では神々の最終戦争「ラグナロク」が勃発した際、彼は自由の身になりましたが、戦争のさなか軍神テュールと戦い、相打ちになってしまいます。

番犬の名の通り、死ぬまで勇猛果敢な犬だったんですね。

送り狼の元ネタ?妖怪「送り犬」

今度は日本の言い伝えから、妖怪犬のお話を。

日本各地に彼にまつわる怪談話や言い伝えが残っているそうですが、その中から代表的なものをひとつ紹介しましょう。

夜中に山道を歩いていると、背後からピッタリとついてくる犬が現れることがあるそうです。

驚いて逃げようとすると、いきなり飛び掛かってきて食い殺されるという怖い妖怪。

でも、「どっこらしょ」と近場の岩などに腰掛けて休憩するふりをすると襲ってはこないのだそう。

しかも、地方にもよりますが、山道を越えたあと「お見送りありがとうね」と一声掛けてやると、それ以上はついてこないので、そのあと帰宅したら感謝の意を表して彼にお供えしてあげるのだとか。

犬の妖怪にしても人間にしても「送り犬、転じて送り狼」にはご注意ですね。

死者の守護者「アヌビス」

エジプトの神話をご存知な方なら、お馴染みの神さまですね。

アヌビス神は、犬頭人身の神さまです。

古代エジプト時代、良く墓所の周囲を犬たちが歩き回っている様子を見かけた当時のエジプトの人たちは、これを「死者を守ってくれているのだ」と考えたところから、生まれたのだそうですよ。

特にエジプト神話では死後の世界についても語られることが多く、そんな言い伝えから生まれた神さまも大切にしていたんだと思います。

また、アヌビスは冥界の神さまであり、ミイラづくりの神さまでもあるんですよ。

真神(まがみ)は狼の異名

最後に、厳密には犬ではなく狼の話になりますが…日本の言い伝えから真神を紹介しましょう。

まだ日本にも狼が存在していた頃、畏怖の念をもって人々は彼らを「真神(まがみ)」と呼び神として扱ったのだそうです。

野生の猪や鹿などから作物を守り、善人を守護し悪人を罰する神さまなのだそう。

今でも、狼を祀った神社が日本のあちこちに実在し、そこで頂けるお守りにはしっかりと狼が描かれているとのことです。

ちょっぴり興味が湧きますね。

まとめ

犬はその勇敢さから、どちらかと言えば勇猛な神さまや妖怪のモデルになることが多いようです。

でも、その姿に見え隠れする情の深さや忠実さもまた、神格化され尊敬され身近に感じる存在になっているのも確かなんです。

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